ここ数年で電気とガスが相次いで自由化され、自分で供給会社を選ぶことができるようになりました。ひと昔前なら想像もつかなかった状況です。
関西電力のガス、大阪ガスの電気。そんな矛盾したものができようとは。
なんにしろそこに今まで無かった競争が生まれ、我々消費者は選択次第で料金が安くなるなどのメリットが享受できるようになりました。各社、他のインフラとセットにしたお得なプランだったり、独自の料金体系だったり、それぞれ個性を打ち出しています。
そんな中、個人的に真打ちとも言える電気料金プランが大阪ガスから発表されました。その電気プランを選択することでAmazonプライムの年会費が無料になるという「スタイルプランP」です。
今や動画に無料配送にとプライム必須の生活。無条件で飛びつきそうになりましたが、今のプランと比べて得になるんだろうかと一旦冷静になって調べてみました。すると意外な結果が待っていたのです。
「関西電力からの乗り換え」と「大阪ガス内でのプラン変更」の2つをシミュレーション
「電気は関電」「ガスは大阪ガス」のままにしてない?
大阪ガスがこのプランを導入する意図は、主に関西電力の電気を使っている顧客を自社に取り込むためだと思われます。そのため、乗り換え前のモデルケースとして以下のような設定があります。
図にそれが示されていて、年間のお得額も書いてありますね。5,400円お得になると。
画像引用:大阪ガスの電気 スタイルプランPに切り替えると、Amazonプライムがついてくる。/大阪ガス
電力の自由化、それに少し遅れてガスが自由化されしばらく経ちます。
でも関西人の多くは惰性で電気は関西電力のまま、ガスは大阪ガスのままというご家庭が多いのでは無いでしょうか?関西電力の料金プランもずっと昔から基本プランとして存在している「従量電灯A」のままのご家庭が多いはず。でもこんな人多いんじゃない?
自由化により選択肢が増えて今よりお得になるかもしれないというのはなんとなく把握してる。でも調べるのがめんどくさいしそのままにしてる。
選択肢が増えたはいいけど、増えすぎて調べるのも手間だし。
料金プランを調べるのが面倒なあなたがターゲット
そんなめんどくさがりのあなたをターゲットに「Amazonプライム1年分が無料でついてくる!」という超分かりやすいメリットを前面に押し出して顧客を獲得しようとしているわけです。
そこのあなた、狙われてるぞ!
しかし果たしてこのお得額年間5,400円というのは本当なのか?そんなうまい話あるのか?何か裏があるんじゃないか?疑り深い私は真っ先にそう思いました。
というわけで、まず関西電力の「従量電灯A」を使っている人がスタイルプランPに乗り換えたケースの差額を検証してみます。
それに加えてもう一つのケースも検証。
大阪ガスで電気ガスを一本化している場合
各社が「電気とガスをうちでひとまとめにしたら割引してあげるよ」という内容のプランを出しているので、引っ越しなど何かの機会に電気とガスを一本化したご家庭も多いはず。
うちも2017年の引っ越しを機に電気とガスを大阪ガスに一本化しました。
電気はガスとセットの場合のみ契約できる「ベースプランA-G」ってやつを選んでいます。
料金体系はろくに見ないまま、契約時に言われた「関電より確実に安くなる」という言葉を鵜呑みにして決めました。
この機会に料金体系を再確認し、プライム付きの「スタイルプランP」のほうがお得ならプランを変更しよう。こちらも同じく差額を検証します。
関西電力「従量電灯A」と「スタイルプランP」を比較する
まずは関電の「従量電灯A」と大阪ガスの「スタイルプランP」を比較検証していきましょう。
本当に5,400円分得するの?
各種媒体に「プライム年間額とあわせて約5,400円得する!」とアナウンスしていますね。2018年10月現在、テレビCMもちょくちょく見かけます。でも私は関単に信じませんよ!さっきから書いてるように疑り深いですから。
検証してカラクリを暴いてやる!覚悟しておけ大阪ガス。
以降、電気代の試算は、モデルケースとしてあった4人家族で月370kWhという前提で計算していきます。ちなみに我が家も4人家族ですが、月平均370kWhというのは年間でみると妥当な数字だと思います。
関西電力従量電灯Aで1ヶ月370kWhを使った電気代
今関西で最も契約数が多いであろう電力のプラン、従量電灯Aで370kWhを使った一ヶ月間の電気代がこちら。
電気代は必ず必要な最低料金と3段階の料金区分があり、使えば使うほど1kWhあたりの電気代が高くなっていく仕組みです。水道代もこんな料金体系ですね。
計算すると一ヶ月の電気代は約「9,002円」となりました。年額にすると約「108,026円」です。
本来の請求額は、この額に燃料調整単価やらが乗っかってきてもう少し高くなるのですが、それらの額はどのプランでも同じなので省略します。
大阪ガスのスタイルプランPで1ヶ月370kWhを使った電気代
続いてスタイルプランPの電気代がこちら。
計算すると一ヶ月で約「8,874円」となりました。年額にすると約「106,497円」です。
関西電力の電気代より少し安くなりましたね。
お得額5,400円は正しかった!
では差額を検証していきましょう。
関電の年額約「108,026円」から、大阪ガスの年額約「106,497円」を引くと…
電気代として年間約「1,529円」お得ということになります。ここからさらにAmazonプライムの年会費3,900円を加味すると…
というわけで、検証の結果、従量電灯AからスタイルプランPに乗り換えた場合の年間お得額は約「5,429円」となりました。ほんとうに約「5,400円」お得だった!
疑ってごめんね、大阪ガスさん。
電気使用量が少ないとお得額は減るけど損はしない
従量電灯AとスタイルプランPを比較して、電気代がお得になるのはある程度電気使用量が多い場合においてです。
スタイルプランPは最低料金と1段階目の電気料金が高めに設定されているため、単身世帯など電気使用量が少ない場合は従量電灯Aより電気代が高くなる逆転現象が起きます。
単身世帯の平均電気使用量が分からないので仮に370kWhの半分、185kWhで試算した結果がこちら。
従量電灯Aのほうが月額200円ほどお得、年額だと2,620円の差額が出てきます。それでもAmazonプライムの月額より下回ってますので、損することはありません。1,300円ほどお得。
仮に極端に電気使用量が少ない場合、月平均が最低料金15kWh以下の使用量だとしても損をすることはないのでご心配なく。
大量に電気を使用するならお得感は少ない
想定されている370kWhより使用量が多い場合、3段目の料金がどちらも同じ額に設定されているため、どれだけ使っても電気代の差額は同じまま。使えば使うほどお得というわけにはいきません。
大量に電気を使うなら他のプランや他社を検討したほうがいいでしょう。
惰性で関西電力を使っているなら検討の価値あり
結論として、以下のような人は今すぐ乗換えを検討すべき。
上記の条件にあてはまるならまず損はしません。
現状で関西電力の従量電灯Aあるは従量電灯Bをお使いであればネット経由で申し込めるようです。
ご検討くださいませ。
なおこの記事は大阪ガスの提供を受けて…おりません。上のリンクから申し込んだところで私には何の得にもなりません。単純に自分のために自分で調べた結果をまとめただけです。念のため。
そもそもAmazonプライムって3,900円の価値があるの?
月額325円と考えればお得しかない
「Amazonプライムの年会費3,900円を大阪ガスが負担してくれる!」という特典ありきのプランなわけですが、そもそもAmazonプライムに3,900円の価値があるのか?
現役Amazonプライム会員の私から言わせてもらうなら、3,900円以上の価値があると断言します。月額325円に換算したほうがより分かりやすいかも。
サービスはかなり多岐に渡るんですが、私が普段から価値を感じているAmazonプライムのサービスを3つだけ紹介します。
送料や日時指定が無料になる
まずはお急ぎ便や日時指定、送料が無料になるなど、配送に関してのサービス。
Amazonでは2,000円以下の注文は送料が必要になるのですが、プライム会員ならこれが無料に。一部の低価格商品は送料無料対象外(あわせ買い必須)になりますが、月に一回でもAmazonで買い物をするならそれだけで月額325円の元が取れてしまいます。 ヘビーユーザーならなおさら。
月額325円で話題の動画が見放題のプライムビデオ
そしてプライムビデオ。家族がいらっしゃるご家庭ならこれが一番価値があるサービスかと。
いろいろな動画見放題サービスが運営されていて、今この手のサービスは花盛り。その中において、月額325円というのは破格の安さです。
安いからといって動画が少ないかというと全くそんなことはなく、他のサービスと遜色ありません。子どもから大人まで楽しめるようにジャンルも豊富に用意されていて、家族の誰でも楽しめます。
最近は見逃し配信的な動画もあったり、本放送と同時配信なんてのもあったりします。
例えば今年2018年はじめに話題になったアニメ、ポプテピピック。
このアニメは私が住む大阪で放送されてなかったんですが、プライムビデオのおかげで本放送と同じ時間にリアルタイム視聴をすることができました。実況をみながら楽しむリアルタイム性が重要なアニメだったので、これには本当に価値を感じた次第です。
定期的に動画の入れ替えもあるんで飽きもきません。
BGM的に使うなら十分なプライムミュージック
最後にプライムミュージック。
100万曲が聴き放題というふれこみ。この数字に偽りはないと思いますが、過度な期待は禁物です。「あのアーティストのあの曲を聴きたい」なんてピンポイントな要求にはほとんど応えられない。アーティストによっては1曲もなかったりするし。なんかよく分からんアーティストが演奏しているカバー曲なんてのも結構あったり。
しかし「1999年の邦楽ヒット曲」なんてプレイリストがあったりして、なんとなく流し聴きしていると、「思い出の曲やんけ!」とか「こんな曲あったのか!」なんていう、思いがけない再会や発見があります。
そんな感じで、ラジオよりちょっとだけ能動的に聴けるラジオぐらいに思えば楽しめるサービスです。個人的には、配送無料とプライムビデオについてくるおまけぐらいに思ってます。
好きな音楽をガンガン聴きたいというのであれば、オプション的に「Amazon Music Unlimited」というサービスがあり、プライム会員なら月額780円で使えます。
聴ける曲数は、プライムミュージックとは段違い。とりあえず30日間は無料で使えるので、試してみて自分の要求に応えられる曲のラインナップであれば使ってみるのもいいかもしれません。
大阪ガスの「ベースプランA-G」と「スタイルプランP」を比較する
続いて、大阪ガスで電気とガスを一本化してる場合のプラン変更も検討してみましょう。一本化している場合はセット割のような割引があるので、その時点ですでに安くなっています。果たしてプラン変更する価値はあるのか?
関西電力従量電灯Aで1ヶ月370kWhを使った電気代
大阪ガスで電気とガスを一本化している際のスタンダードプランが「A-Gプラン」。ガスとセットにすることでお得な電気料金体系になっています。当然ながら大阪ガスでガスを契約していないと契約できません。
A-Gプランで370kWhを使った1ヶ月の電気代がこちら。
月額約「8,544円」となりました。
年額にすると約「102,536円」です。
大阪ガスのスタイルプランPで1ヶ月370kWhを使った電気代
先ほども掲載しましたが、スタイルプランPの電気代がこちら。
月額約「8,874円」で、年額にすると約「106,497円」です。
そもそも最低料金に倍以上の開きがあるので、A-Gプランより確実に高くなります。
プライム年会費を加味すると損得ほぼ無し
年間の電気代の差額は…
スタイルプランPの電気代のほうが、年間で約「3,960円」高くなる。
しかしプライムの年会費3,900円を考慮すると…。スタイルプランPを選ぶとA-Gプランより年間「60円」損することが判明しました!ガリガリくん1本分程度の損!まあこの額なら誤差の範囲内で済ませてもいいレベル。
実に絶妙な料金体系ですね。感心します。
手続き変更の手間とか、毎年プライム用のギフトコードを打ち込まなければいけない手間などを考えたら、そのままA-Gプランでいいんじゃないでしょうか?
少なくともプラン変更をするメリットは見つかりません。
追記(2019/04/12):
この機会に電気料金を見直してみましょう
先ほども書きましたが、なんとなく関西電力の電気を使い続けているという人は十分に乗り換え検討の価値があります。問題なければ乗り換えてみるのがいいかも。電気とガスを一本化すれば使用量の確認や支払いもシンプルになりますからね。
しかし私自身は自分が使っている電気料金プランの内容を見直すいい機会になりました。結果的には現状維持ということになりますが。
スタイルプランPの検討に関わらず、今の生活スタイル等を考慮すればお得になる電気料金プランがあるかもしれません。自動車保険の見積もりのように、電気代の無料一括比較サービスなんてのもありますのでお試しください。
ちなみにうちは新築一戸建てに引っ越してから水道光熱費が激減しました。最近の住宅は省エネ性能をアピールしていますが、あながち大げさな表現ではないと思います。
くわしくはこちらの記事をごらんください。
まあ電気代は増えたんですけどね。