「一戸建てに引っ越したら水道光熱費が増えるよ。」
よく言われるフレーズです。新築の戸建てに引っ越す場合、それまで賃貸のマンションやアパートに住んでいたというパターンが多いはず。必然的に家の床面積や部屋数が増えるでしょうから、照明や空調の電気代は増えそうな気がします。ガス代はどうだろう?水道代は?
引っ越しから生活が落ち着き、一ヶ月分の料金を見るまで分かりません。私自身、一回目の請求がくるまではドキドキでした。めっちゃ増えてたらどうしよう…?特にうちは3階建て。2階建てより余計にかかりそうな気がします。
しかし予想に反して「電気代以外」は減った、いや激減といっていいぐらいに減りました。請求書をみたときは間違いじゃないかと思ったぐらい。
しかしよくよく考えてみればそれは当然の結果でした。その理由を検証していきます。
なお、これはあくまで「うちの場合」なので、全てのご家庭にあてるわけではありません。それを予め理解いただいたうえでご参考に。
水道代とガス代が約半額になった!
電気代は増えたけどそれ以外は明らかにに減った
まず最初に具体的な結果から書きましょう。
以前住んでいた3DKの賃貸マンションから、2017年新築の一戸建て4LDKに引っ越して光熱費はこのように変化しました。
- 電気代→3割増し
- 水道代→ほぼ半減
- ガス代→ほぼ半減
電気代は増えたもののそれ以外は明らかに減りました。
電気やガスの使用量は季節要因が大きいため単純比較はできず、本来ならば1年のうちの同じ時期での比較をすべきところです。しかし、まずは水道光熱費が顕著に減ったという感動を残したく、主観もありますが書かせてください。
新旧、以下の条件での比較になります。
秋から冬へ移行する時期で気温が下がるので、ガス代と電気代が上がっていく時期になります。それに加えて、2017~2018年の冬は都市部でも川が凍るほど、全国的に記録的な寒さでした。にもかかわらず、水道光熱費全体で見れば減ったという事実。
これにはちゃんと理由があるはずです。紐解いていきましょう。
実際の検針票をみてみよう
理由を検証していく前に論より証拠。
劇的に水道代が減ったという客観的なデータを見てください。これは引っ越し前の検針票と引っ越し後の水道検針票です。水道局によるかもしれませんが、うちの地域では2ヶ月分がまとめて検針、請求されます。
見ての通り同じ市内での引っ越しなので、料金体系に変わりはありませんし、この間水道代の値上げ値下げもありませんでした。
引っ越し前に住んでいたのは1988年に建てられた3DKの賃貸マンション。ぎりぎり昭和時代の建物ですね。そこに10年ほど暮らしていました。お風呂やキッチンは明らかに古臭くて、水周りを含めていろいろと昭和を引きずった雰囲気。
そこから新居に引っ越しをしたのはが10月末なので、両方で生活していた中途半端な10月の期間比較対象には含めていません。きっちり、引っ越し前と引っ越し後における2ヶ月間の使用量と料金です。特に節約は意識せずに過ごしました。
見てください!使用量が75立方メートルから50立方メートルなので綺麗に2/3の使用量になっています。
じゃあ料金も2/3になると思いきやほぼ半額。これは使用量が増えるほど単価が増える段階料金になっているからですね。使用量が減ったことで1段低い料金の範囲で留まった結果です。
明らかに減ってるでしょ?
ガスと電気に比べ水道代は1年を通してほとんど使用量が変わらないので、何か明らかな要因があって減ってるはずです。
水道使用量が減った理由
水道を使用する箇所は増えた
家の中で水を使う場所をリストアップしてみましょう。新旧の住居を含めて以下のようになります。
引っ越してからは単純に水が出てくる箇所が3つほど増えてます。にもかかわらず使用量が減ったのはなんでだろう?
調査した結果、節水に貢献したであろう大きな3つの要因がありました。
最も節水に貢献したのはトイレ!
トイレ。
あんまり意識しませんが、実はかなりの水を使います。実体験があるので参考に書いてみます。
子どもが4年生になり学童保育が無くなった年、夏の水道代が大きく跳ね上がりました。なんでかというと、夏休みで日中はほとんど家で留守番をするようになったから。
夏だからといって水浴びしてるわけじゃありません。家でのトイレの回数が増えたからです。そう、一回一回の水量はそれほどじゃないから気にしないけど、トイレって相当水を使う。
調べてみると、以前賃貸に住んでいたときのトイレは、大きい方を流すとき13リットルの水を使っていたようです。1980年台の建物で、トイレもたぶんその時代のもの。
しかし引越し後のトイレは、大きい方を流すときわずか4.8リットルの水しか使わない、比較的新しい節水タイプのトイレになりました。最初は不安でしたね、こんな少ない水でちゃんとウンコさんが流れるのかって。
新しいトイレはTOTOのトイレ。
TOTOのサイトを調べると素晴らしい資料があったので引用させてもらいます。
出典:Q.03 トイレでどれだけ水を使うの? TOTO環境BOOK[水と環境] | TOTO
2000年前後を境に、劇的に水量が減ってるではないですか。
旧タイプの1/3に近い値です。そりゃ水道代減るわ。さらに最新タイプは3.8リットルとか、ちょっと不安になるレベルの節水(主にウンコさんが流れるかどうかの不安)。
これは家族が多ければ多いほど大きな効果が出そうですね。
トイレの節水効果と引き換えの弊害もある
なお節水効果とは引き換えの弊害もあります。
少ない水でも目の前の便器からはきれいに流れるようになったものの、その先にある下水のパイプは同じ。従来はたっぷりの水で一回一回下水の本管まで流していたところ、節水タイプになってからは当然その効果が落ちているわけです。
結果として下水が詰まりやすい要因になっていると。詰まりの主な原因は紙類。最近は流せるお掃除シートなんかもあるわけで、余計に詰まりやすい要因になっているようです。特に2階以上にあるトイレは1階まで垂直に落下させる構造になっており、その衝撃で流したものが飛び散りこびりつきやすい。ということを、新築から2年目の点検の際に聞いてなるほどと思いました。
まあ普段から家に人がいて毎日定期的に流しているぶんにはそんなに心配いらないようですが、旅行なんかで数日家をあけるときなんかは、出かける直前に多めの水を流してパイプ内を一掃しておいたほうが安心です。
10年ぶりに買い換えた穴なし槽の洗濯機も節水に貢献
水道代節約に貢献したポイントをもうひとつ。
引っ越しを機に、10年間だましだまし使ってきた8kgタイプの洗濯機を10kgタイプに買い換えました。
容量が増えたんだから使う水の量も増えるだろうと思い込んでいたのですが、実際に動かしてから水量の表示を見て減っていることに気付きました。以前の8kgタイプは満水で64リットルの水を使っていたところ、新しく購入した10kgタイプは満水で53リットル。1~2割ほど減ってます。
ドラム型を選んだわけではなくスタンダードなタテ型。10kgタイプに絞って選び、その中で安過ぎず高過ぎないシャープの洗濯機を選びました。ハイアールとか安いのもあったんですがちょっと抵抗あったので。選んだのはこれ。
これが節水の面ではいい選択をしたようです。この洗濯機の特徴は、他のメーカーには無い「穴なし槽」。これが水の使用量に大きく貢献しているようです。
詳しくはメーカーサイトをご覧ください。
洗濯機を回すのは毎日のことだし、回すたびに少なくとも「洗い」と「すすぎ」で2回は満水になる。それに一日で複数回洗濯機を回す日がほとんど。結果として月々100回程度は繰り返されるわけだから、毎回少しの節水でも月単位でみれば差は大きいです。
食洗機の節水効果も高い
食器洗いの手順や作法は人それぞれだと思うので、少ない水で上手く洗える人はそれほど恩恵を受けないかもしれませんが、導入すれば確実に水やガスの使用量が減ります。
なんといっても油汚れの洗浄にめっぽう強いのが食洗機。
食洗機を導入するまでは、なるべく熱いお湯を出し、多めの洗剤を使って洗っていた油汚れつきの食器。たとえば麻婆豆腐とか中華料理を食べた後の食器って厄介ですよね。洗ったつもりでも、乾いた食器を触ったら油でヌルヌルだったり。
その点、食洗機なら高温のお湯と強力な洗剤の効果で強力に油汚れを落とします。こびり付きを予め落としておけば、どんな油汚れも完璧に落としてくれます。
設置するための初期費用はそれなりにかかりますが、節水効果とガス代の削減で、5年も使えば十分元がとれるはず。わたしのように食器洗いが下手な人ならなおさら。時間も節約できますし。食洗機用の洗剤代が少し高いですが、それも普通の液体洗剤より月々100~200円程度高いだけなんで誤差の範囲です。下水パイプの汚れも軽減できるので、メンテ費用も抑えられます。
その他の水道代はどう減った?
水道代削減に大きく貢献したのは上の3つ。それ以外はざっとまとめます。
まずお風呂。
以前の賃貸では三角座りで肩を出しながら湯船につかっていたところ、新居では足を延ばして肩まで浸かれるようになりました。湯船の大きさは約1畳のサイズ。単純に以前より1.5倍ぐらいの設置面積になってそうです。じゃあお湯も1.5倍必要かというとそうでもなくて。
その秘密は足元にある出っ張り。この写真でいうところの左側にあるステップですね。
あんな出っ張りがあったら入り心地が悪いんじゃない?と思うかもしれませんが、足元なんで全く影響なし。肩まで浸かるには仰向けに寝転ぶのに近い体勢になりますが、足を延ばして肩まで浸かれるという贅沢さ。体を包み込むような浴槽の形状もよく考えられています。
お風呂に関してはシャワーヘッドも節水タイプでした。
洗面所に関しては特になにも影響なさそうです。言っちゃなんですが、ちょっと安っぽい感じなんで賃貸にあるものと大差なかった。
外にある散水栓は、洗車したり植物に水をあげるときに使う程度なんで誤差の範囲内かな。
こんなに水道代が減るとは予想外だった
最初のほうにも書きましたが、水道使用量は2/3になり、結果として水道代は約半分。
多少減るかなという予想はしてたんですが、ここまで減るとは想定していませんでした。賃貸にいたときより月々5千円減ることになるので、年間通せばなんと6万円減。
賃貸に10年住んでいたから6万円×10年で…いや止めておこう。
正直言って、CMとかでやってる「節水効果」が謳われる製品って胡散臭いなと思ってたんですよ。機器を変えただけでそんなに変わるか?って。
でも変わっちゃいましたね。すいませんでした!
ガス代が減った理由を考える
プロパンから都市ガスに変わったのが大きい
先述の通り、ガス代に関しても水道代と同じく半減しました。
でもこれにはからくりというか、特殊な前提条件があります。そのせいで大きな下げ幅になっています。というのは、以前住んでいたのがプロパンガスの物件だったから。
プロパンガスは高いし価格が不透明
知ってる人は知ってることなんですが、高いんですよねプロパンガス。
場合によっては都市ガスの1.5倍から2倍ぐらいの料金になります。「場合によっては」と書いたのは住んでいる物件によって、世帯ごとの契約によって料金が異なる場合があるから。同じプロパンガス会社でも家ごとに料金が違ったりすることがあるのです。隣の家とガスの使用量は同じなのにうちのほうが高いなんてことも有り得ます。
しかもその料金体系も不透明。
都市ガスならホームページを見れば現段階の料金表がかんたんに見つかりますが、プロパンガスの場合は掲載がない場合がほとんど。
↓こんなサイトがあるぐらいなんでその闇の深さはお分かりいただけるのではないかと。
とまあそんな条件があったので、うちのガス代は都市ガス物件に引っ越したことで大きく下がりました。
なんせ以前住んでいたプロパンガス物件だと、真冬の一ヶ月で2万円前後のガス代を払ってましたからね。お風呂に追い炊き機能もついてないのに。それが引っ越したら真冬でも一ヶ月1万円前後になったので驚いています。ガンガン追い焚きしてたのに。
減ったには違いないのですが、これをもって「新築に引っ越したらガス代が減る」というのはフェアじゃないですね。都市ガス物件から都市ガス物件への引っ越しでどう変わるかは分かりません。たぶんそんなに変化はないでしょう。
こういうケースもあると参考程度にとどめておいていただければ。
お湯の使用量自体は減ってるはず
とはいえガスの使用量、お湯の使用量は食洗機の導入によって減っているはずです。LPガスと都市ガスなんて単純比較が難しいんですが。
食洗機のお湯は給湯器のお湯を併用するものの基本は電気で熱せされてつくられるのでガス代ほぼゼロ、流しのお湯も食器のゴミを取り除くときにさっと使う程度です。その分電気代に転嫁されてるわけですが。
ちなみにガスについては冬場の暖房にガスファンヒーターを使ってます。
それほどガスは消費しないし、暖房としては非常に優れもの。もしお部屋にガスコンセントがあるならぜひ導入を検討して欲しい製品です。ほんと、最強の暖房器具だと思ってます。
電気代が増えた原因を考える
浴室暖房の消費電力がケタ外れだった
水道光熱費の中で、唯一増えた電気代。
これ、明確に原因が分かってます。前の家にはなかったお風呂の天井にあるこいつです。
暖房機能自体はとても満足していて、冬場の一番風呂もヌクヌクで入ることができるようになりました。冬場は家族がお風呂に入る時間、総計90分ぐらい毎日稼動させてましたね。これが毎日地味に電気代をアップさせていました。
さらにこいつを長い時間フル稼働させる日があり、その日は電気代が跳ね上がることになります。ではここで、とある冬の月の電気使用量グラフをご覧ください。
数日に一回、電気代が突出して増えてる日がありますね。
この日は全て雨が降っていた日。
そう、洗濯物の乾燥機として部屋干しに浴室乾燥機能を使った日です。だいたい洗濯物を乾かすのに8~10時間ほどかかり、結果的に通常の日の2~3倍の電気使用量となってしまいました。
うちの浴室換気暖房乾燥機は、消費電力が1時間あたり1300W。洗濯物の乾燥具合を察知してパワーをコントロールするような機能はなく、ずっと実直にフルパワーの1300Wで運転します。男らしいね!不器用だね!
1300Wってピンとこないかもしれませんが、大き目のドライヤーをハイパワーで動かしたぐらいの消費電力です。こういうでかいドライヤーのハイパワー。
考えてみてください、ドライヤーを10時間近くつけっぱなしにすることを。とんでもない電力消費に感じるでしょ?
その他の要因もあるかもしれないが
床面積が1.8倍になった分だけ使う照明も増えているのですが、ほぼ100%LEDになったのでむしろ照明に使う電気代は減ってる可能性すらあります。
その他、以前は無かった24時間換気のためのファンが3箇所稼動してますが、小さなモーターなので、合わせてもせいぜい月間200~300円程度のアップにとどまっていると思われる。
エアコンはまだ取り付けすらしてないし、電気ヒーター類もほとんど稼動させていない。寒くなったからコタツをつけるようになったぐらい。
となると、やはり電気代を大きく跳ね上げているのは浴乾に間違いありません。で、これを使えば洗濯物がしっかり乾燥するかといえば…イマイチなんですよね。特に冬場。標準で8時間ほど運転させるんですが、冬場に気温が低くなるとまだ湿ったまま。風が直接あたるところだけはカラッと乾いてるんですが。
【まとめ】世の中どんどん省エネになっている
以上、新築一戸建てに住んだら水道光熱費が減った理由でした。
水道光熱費トータルでみれば、月々1万円近く安くなっていることになります。1年で12万。10年で120万。塵も積もればなんとやらですね。
しかしこれはあくまでこれはうちのパターン。以前の住環境がどうだったかという条件に大きく左右されますので、全ての人にあてはまるというわけでは無いと思います。一戸建てに引っ越したことで増えてしまう場合も当然あるでしょう。
しかし、今どきの住宅設備は新しければ新しいほど省エネの効果が高いのは確かです。そもそも建物自体の省エネ性能、つまり断熱性や機密性が向上しているから、部屋の中でつかう暖房や空調も省エネ運転が出来る。その空調、特にエアコンなんかはこの十年でさらに省エネ設計になってる。
住み替えは膨大な資金が必要だったりするので躊躇してしまいますが、長い目で見れば大きな差が出てくる可能性もあるので、ローンや家賃など含めトータルで考える必要がありそうです。