1996年に発売されたTOKYO No.1 SOUL SETのアルバム「Jr.」をレビューします。
Jr. / TOKYO No.1 SOUL SET(1996)
いつの時代も普遍的に奏でられる音楽がある一方で、その時代その場所だからこそ生まれた音楽というものがあります。このアルバムがまさにそれ。1996年の東京でしか生まれ得なかった音楽。
当時は「渋谷系」なんていう、今となってはなんとなく口に出すのが恥ずかしい文化というかジャンル分けがありました。当時は間違いなく最先端のオシャレワードだったんだけど。
私の解釈するところの渋谷系の音楽の中心アーティスト。それはフリッパーズギター解散後にそれぞれソロ活動を始めた小山田圭吾と小沢健二、そしてピチカートファイブの小西康陽。この三人。オリジナルラブの田島貴男を入れるとかいろいろ解釈ありますが、私はこの3人のアーティストの重力圏にいるアーティストを渋谷系と解釈していました。そういう意味では電気グルーヴも渋谷系にカウントしてた。
当時のCDショップでは「小山田圭吾推薦!」とかPOPに書かれていたら、どこぞのよく分からん海外アーティストのCDがそれなりに売れてしまうほど彼らに影響力がある時代でした。 私も小山田推薦ならということでこのCD買いましたね。
そしてTOKYO No.1 SOUL SETはというと「オザケンのお気に入り」というふれこみで私は知りました。実際どうだったのかは知りませんが当時は本当に影響力があったので、このフレーズを販促に使ったのでしょう。
そんな経緯で一枚目のアルバム「TRIPLE BARREL」からそれなりに注目されていて「Jr.」は二枚目のアルバム。これが発売された1996年当時私は高校2年。当時は渋谷系の音楽こそホンモノ!オシャレ!な思想にどっぷりつかってました。それこそDMCの根岸みたいな。なので「Jr.」もリアルタイムで聞いてはいたのですが正直あまりピンと来ず。
それからまた聞き込むようになったのは6年後にこのイベントでソウルセットのライブを観てから。
素晴らしいライブでした。特に終盤の「ヤード」から「Jr.」の流れで一気に心を持っていかれて、次の日すぐさま中古屋を駆けずり回って旧譜を揃えたのを覚えています。
90年代当時の音楽は過去の音楽から掘り起こされたサンプルリングが多用されていました。同じ渋谷系界隈でいうと例えばコーネリアスの「69/96」。
テクノ界隈ならTHE ORBとか。
私はこの時代の、サンプリングされたいろいろな音がごった煮になった闇鍋のような音楽が大好き。いい意味で猥雑。でもそれを自覚したのは2000年を過ぎてから。だから「Jr.」の良さに気付くのにも6年かかったわけです。6年後に聞いて、なるほどこれはあの90年代の空気だと。
2000年以降になると権利関係がややこしくなったのか、サンプリングが多用された音楽は洋邦問わず減っていきました。90年代の猥雑さが取り払われて音楽はシンプルなものに。いや決してシンプルではないんだろうけど90年代と比べたらシンプル。
2005年に復活したソウルセットのアルバム「OUTSET」もそんな印象。それはそれでいいんだけど楽しかったなあ90年代。
「Jr.」の収録曲をピックアップ
もう全曲好きなんですが選ぶならやはり最後を飾るこの2曲。
ヤード
名曲!
Jr.
名曲!
すまぬ!
なんか上手く語れないし、語れば語るほどうそ臭くなるから今はこうしておきます。いつかこれを言葉に出来たら追記します。口を開けて手を叩く準備をしつつ。
「Jr.」の総評
私以外にもソウルセットのアルバムの中から一枚選べといわれたら「Jr.」を選ぶ人は多いと思います。名盤中の名盤。ヒップホップ?ラップ?そんなものを超越して「TOKYO No.1 SOUL SET」というジャンルが確立されたアルバムだと思います。
次に発表された「9 9/9」も名盤ですが、なんかこう緊張感というかヒリヒリしてて聞くのがちょっとしんどいのです。めっちゃかっこいいんだけど終わりの気配も見えて。
実際しばらく自然消滅したような状態で復活は2005年を待つことになりました。その後は熱心に追いかけていないのですが、3人で音楽を楽しんでいるなという空気が伝わってきます。
スチャダラとのコラボ曲とか最高でした。6人のおじさんが一生懸命ダンスしているPVもほほえましい。