3階建て木造住宅は狭い土地に建つもの。
狭い土地を生かしつつ生活空間を広げるため上に伸び、結果として階が増えたわけです。そのため、土地の広さが20坪程度ということも多い。
いわゆる狭小住宅の定義が15坪以下ですから、20坪の土地もじゅうぶんに「狭い」の範疇にはいるでしょう。そんな20坪の土地に建つ3階建てはどんな間取りになっているのでしょうか?果たして日々快適に生活できる間取りなのでしょうか?
まさしく「20坪の土地に建つ3階建て」に住んでいる私がその生活のリアルを語ります。3階建てを検討している方の参考になれば。
そもそも20坪ってどれぐらいの広さ?
坪って言われても
土地が20坪という前提でこの記事を書いていくわけですが、「坪」という面積の単位はそれこそ家なり土地なりを買うときにしか使わない単位です。20坪ってどれぐらいの広さか想像できますか?
では実物を見てもらいましょう。これが20坪の広さをもつ空き地です。
なんとなく広くないのは分かるけど、いまいちピンとこないですよね。
賃貸住宅を借りるときにも部屋の広さは意識しますけど、物件資料での面積は坪じゃなくて「平米(平方メートル)」で表記されているのが常識。なので坪って言われてもピンとこなくて当たり前です。家を買うまで自分もそうでした。
およそ66平方メートルで畳約40枚分の広さ
まず20坪を平米に変換してみましょう。
1坪は「3.30579平米」。これが20坪ならおおよそ66平米(66平方メートル)になります。なるほど66平米か…ってこれでもピンとこないかもしれません。時代や立地によって異なりますが、小中学校の教室がだいたいそれぐらいの広さです。
では部屋の面積の単位としてもっとも身近な「帖」に変換してみましょう。一帖は畳一枚分の広さですね。ちなみに「帖」と「畳」はおなじ面積で、通例として洋室は帖、和室は畳で表記するようです。
さて20坪は何帖分になるでしょうか?
一般的に1坪は「およそ2帖」とされているので平米より計算が楽です。なので単純に2をかけて、20坪は40帖分の面積ということになります。
まとめるとおおよそこんな広さ。
畳40枚分?めっちゃ広いやん?大広間作れるやん?修学旅行の大部屋みたいな部屋できるやん?
しかし話はそう上手くいきません。
1階分の部屋の広さは20帖以下になる
住宅には建ぺい率というものがあります。土地の面積に対して建築物を立てられる面積の割合のこと。
住宅地なら60%というのがよく見る数字。例えば100坪の土地があって建ぺい率が60%なら60坪の広さまでしか家が建てられないということになります。余った土地は外構なり庭にして構造物は建てるなと。半分近く制限されるってけっこうな割合ですよね…
さきほど40帖と聞いて「広い」と感じたわけですが、建ぺい率を考慮すると建物が建てられる面積はどれぐらいになるでしょうか?
建ぺい率60%と仮定して計算すると「20坪×60%=12坪」。そして「40帖×60%=24帖」。1階分の広さが24帖分とれると。
私の感覚なら、24帖でもまだ広く感じます。
しかし、3階建てなら階段を設置するための面積が1~2帖ほど必須。トイレがあるなら1帖分の広さを使うし、壁や間仕切りなどの構造物も薄いなりに全体ではそれなりの面積を使う。
よって、20坪の土地で建ぺい率60%という前提なら、例え1階分を丸々部屋にしたとしても床面積が20帖以下の広さになります。
例を見てみましょう。
20坪の土地に建つ3階建てのリビング例
こちらはまさしく20坪の土地に建つ我が家の2階間取りです。2階にある部屋はLDK(リビングダイニングキッチン)1部屋のみ。
南側のインナーバルコニーが部屋に食い込んでいるので更に部屋の面積が削られ、LDKは17.75帖となっています。この17.75帖にはもちろんキッチンも含まれています。
うちの場合、いわゆるローコスト住宅のせいか家の形状が1階から3回までほぼ箱型の直法体です。なんの面白みもない建て方。そのためどの階もこの階とほぼ同じ床面積になっています。
広さをイメージしつつ
20坪の土地に建つ3階建てって、1階分がこんな広さだとというイメージを持っていただけましたか?
それでは各階の間取りを我が家を例にしながら解説していきます。色々と物件をみてきたから分かりますが、うちは典型的でよくある3階建ての間取りだと思います。
では3階から順に階を降りていきますね。
3階は個室のフロア
3階の間取りは個室スペース
3階の間取り図がこちら。
個室があるフロアです。多くの3階建て住宅もそうでしょう。
階段は下りのみなので階段につかう面積は半分ですが、各部屋に収納スペースが必要です。20帖を3等分出来るわけではない。なので6帖の部屋が2つと4.5畳程度の部屋を1つとるのが精一杯。4畳半って昭和か。
まあ広いとは言い難いですよね。
なんとなく広さが分かったところで3階建て住宅における3階部分の特徴を挙げましょう。
見晴らしがいい
こちらは我が家を横から見た寸法図です。北側なので小さな窓がいくつかあるのみですが、西東南にはそれ相当に窓があります。
ご覧の通り、屋根までの高さが10メートル弱。3階の窓から見える景色はその土地から8メートルってとこでしょうか。周りが2階建て住宅ならば、窓からの目線はその屋根の上になるのでとても見晴らしがいいです。
我が家はまさにその立地だったので、3階の部屋から地元の花火大会が見えるようになりました。これは2階建てだとなかなかできないこと。
夏は灼熱地獄で冬はポカポカ暖かい
3階建ての屋根は薄い構造になっていることが多く、夏は屋根を通して熱が伝わってきます。もちろん断熱材は入ってるんですが、真夏の容赦ない直射日光には歯が立ちません。
正直言って真夏は暑いです。
じゃあエアコンをつければいいわけですが、3階へのエアコン設置は工事費用がかさんだり、いろいろと問題があったりします。
反対に冬は他の部屋と比べてほんのり暖かくなります。屋根から伝わる太陽熱もありますし、煙突効果で家中の暖かい空気が上へ上へとあがってくるので。
道路から離れているので静かに眠れる
3階の床面はだいたい地上から6~7メートル離れています。
そんなに高くはありませんが、これだけの距離が開くだけで道路からの騒音がかなり軽減されます。私自身は3階建ての1階で道路に面した部屋で寝ているんですが、夜中は通行人の携帯電話での話し声とかがけっこう聞こえるんですよね。
これが3階だとだいぶ違います。
また、3階は風の通りがよく、気候のいい季節ならそのまま窓を開けて寝ると快適かつ爽快に寝ることができます。高さのせいか虫も少ないですし。
台風の日はさすがに揺れるけど
「3階=揺れる」ってイメージがありませんか?
確かに揺れるときは揺れます。2018年の台風21号では恐怖すら覚える揺れでした。
しかしそれは例外中の例外。
ふだんの多少風の強い日程度だと、3階にいても特に揺れるということはありません。もちろんこれはその土地の地盤や建て方によるのでしょうけど、比較的最近の3階建てならばそれほど不安をもつ必要はないです。
ネットで3階建てについての情報を探すと「誰かが階段を上り下りしただけで揺れる」なんて口コミもあったりしますが、それはかなり古いか欠陥住宅に近い物件だと思われます。
2階はリビングダイニングキッチンがあるフロア
2階の間取りは共有スペース
2階の間取り図がこちら。
リビングダイニングキッチンがある2階は、家族が集まる共有スペースといえます。食事、テレビ、ゲーム。家族が集って何かを楽しむフロアになっています。
2階リビングはネガティブに思われがちだけどメリットもある
2階にあるリビングというのは3階建て住宅の特徴ともいえますね。
どちらかというとレアな存在のためかその使い勝手はあまり知られておらず、ネガティブな印象をもたれがち。
私も当初は馴染めるかどうか不安だったんですが、1年以上住んでみてすっかり気に入りました。ということで記事にまとめています。
メリット・デメリットありますが、私自身は快適に過ごしています。よければご参考に。
1階は水周りとガレージのフロア
1階の間取りは作業スペース+α
1階の間取り図がこちら。
1階はお風呂やトイレ、玄関、ガレージなど、家の中でも機能的な役割を持った設備が集まった階です。作業フロアといえるかもしれません。一応我が家には狭い和室がついていて私の自室でもあるんですが、まあほとんど寝るためだけの部屋みたいな感じですね。狭くとも問題ない。
どちらかというと、家の中でも人の滞在時間が少ない階です。
3階建て木造住宅の1階は壁が多くて窓が少ない
2階建てに比べて3階建ての1階にはより大きな荷重がかかります。そりゃそうだ、上に2階分の構造物を上にのせてるんだから。
なので3階建ての1階にはその荷重に耐えられるよう壁が多く設けられていて、その壁をより頑丈にするため窓の数やサイズも小さいものが使われがち。もともと1階は日当たりが良くないせいもあっていつも他の階より薄暗いです。だからといって風の通りが悪いってこともないんですが。
ちょっとした室内迷路のような雰囲気です。2階建ての1階より閉塞感を感じるかもしれませんね。とはいえ、先に書いたように人の滞在時間が少ないのでそれほど気になることでもありません。
インナーガレージと地震
建売3階建ての1階には、建物をくりぬいたかたちのインナーガレージが作られるのが定番。我が家も当然のようにその構造です。
このインナーガレージ、耐震性という点で問題視されることが多いです。阪神大震災がそうでしたが、大地震が起こると、古い3階建てでガレージがある1階がひしゃげてダルマ落としのように2階が落ちてきている光景をみます。
これに関して私は専門知識が無いので、最近建てられた新しい3階なら絶対大丈夫とは言い切れません。数十年前に建てられた3階建てと今の3階建ては強度も信頼性も違うのは明らかなんですが。
ただ一つ事実として書けるのは、2018年に発生した大阪北部地震では無傷だったこと。我が家は震源から20キロ程度の近い距離にあり、震度5以上を記録した地域でした。さすがにかなり揺れましたが、建物的にはノーダメージ。
しかし壁ではなく開口部であるほうがリスクが高いのは当たり前。その点は頭に入れておく必要があります。
【まとめ】意外といいぞ!3階建て
以上、20坪の土地に立つ3階建てのリアルをお届けしました。
3階建ての狭小住宅というとネガティブな印象ばかり持たれます。私自身も住む前に不安がなかったというと嘘になります。
しかしそこに住んで1年以上。思いのほか快適に過ごしてすっかりそこでの生活に馴染んでいます。
案外悪くないと思います。3階建て。